入選作品 | Topページへ | NHK大会 中日短歌会 |
与謝野晶子短歌文学賞 入選 秀逸
除夜の鐘雪野を流れ去年今年ひたひたと去りしんしんと来る
熱田神宮献詠
平成十四年 佳作
新任教師のわがためにセルの着物解き養母は洋服手縫い給ひき
平成十五年 佳作
神供米作る車田水清く輪をかく早苗風にさゆらく
NHK大会
NHK松江大会 秀作 北尾勲先生
ででっぽうぼく空腹と啼く鳩は豆の降る夢雪空に見た
NHK全国大会 秀作 春日井建先生
冷えこめば味もよかれと短か日を峡の流れに赤かぶ洗う
NHK中部大会 佳作 春日井建先生
皆勤賞受けつつわれの面映ゆし和菓子講座の最年長にして
NHK中部大会 佳作 春日井建先生
夫と子は姿勢正して連管す新春の息吹家内に満ちて
NHK中部大会 秀作 小瀬洋喜先生
ものわかり良き親をなしいる息子かな父子激論の安保遙けし
親の手のぬくもり残る古桶にわれ老いつつ柿渋を刷く
NHK中部大会 佳作 小瀬洋喜先生
通り雨上がりてしずく木の陰に著莪ひとときの夕映に会ふ
NHK松本大会 佳作
母さんと呼べよと言いし少年の兄は逝きたり養母に看取られて
NHK富山大会 佳作
炎暑暮れ山の端出る満月の朱の色深し今宵原爆忌
NHK地方大会 入選
学童の木椀に配りし脱脂ミルクに飢え満たされぬ教師のわれも
夕暮の診療室より若き医師出でて来にけり口笛吹きて
照り分けて夕陽明るき峡の田にはつはつとして走り穂が見ゆ
花えらぶ我と農具に執する夫が牽制し合いてホームセンターにあり
陽は射せど木枯らし吹けどダム底に見え来し村の息吹くことなし
末の子の卒業赤飯食みくれて売薬さんは廃業を告ぐ
湯浴みする新生児己れの指を吸う愛の芽生えが光りを放つ
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中日短歌会 秀歌
とうまくんてやさしいんだよと孫の言ふ官舎の庭に幼き社会
たそがれて失ふものを数ふがに薬の包み仕分けしてをり
一線を画すと心決めしとき丁重にもの言ふわれが在りたり
胸に生るる矛盾をなだめ時かけて飼いならしゆく老いと言ふもの
曲の名は知らね夫奏く竹の音に今日の体調測りつつ聞く
リハビリ室の負のエネルギー重くして付添ふわれがいたく疲るる
どて南瓜に日ぐすりと書く絵手紙が背骨折りたる我を慰む
車曳きが文エ衛門坂を駆けて来る裁着け姿に茶髪ゆらして
寒明けて老いの暮らしも動き初む手作り味噌の案内が来て
立ち読みをする受験子の背が見せる逃避しばしのコンビニ更くる
したたかに転びて口惜しポストまでの浮かれしわれを我が知る故に
頑なになりゆくわれと認めし夜を戻らぬ言葉一人にれがむ
母の忌の如月ぬくき日溜りに甘ゆる思ひの身を浸しをり
灯の下に団居ふ家族の姿見ゆ盆の山家は開け放たれて