妹の死に遭ひ想ひばかりで歌えない秋でした。

   平凡な山を唱って同じような内容になってしまいます。余韻も展開もな

  く落ち込むこの頃です。体調や暑さのせいにしたくはありません。多くを作

  るより、一点に全力をかけるか迷っております。
  
  この秋は心痛むことばかりで、風物の癒しを求め、歌に救はれました

   友の会も9年目を迎えました。実作以来15年一度も欠詠しなかったことだけ

  で、 今も昔も変わらない歌好きですが、実らない結果を寂しく思います。初心

  に戻ってばかりの私です。

  

短歌友の会作品 NHK短歌講座を受講、実作、平成9年より短歌友の会「彩歌」へ投稿してきた作品です。投稿時の思いも書きました。

 平成17年

      
月の明るき我が庭にゆふべもけふも虫の音絶えぬ

       合掌造りの葺き替え作業も重文ゆえに伝統の結い廃れゆく

       新世紀の結いの形を育くみて父祖の遺産を譲り給えな








                         

        火山ガスも受容し帰る島人の明日の幸をひたに祈り

        孫と発つ飛騨路に残月白かりき今台北の没り陽見送る

        飛騨育ちなぜか暖冬は落ち着かぬ雪が降るふる正月がくる 

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平成16年

         白壁を写すお堀の水冷えていつしか鯉の姿も見えず

         城山のなだりに落ち行く冬の陽は土蔵に照りて陰る庭菊

         百年の老舗閉ぢたるわが友は火伏せの土蔵をひとつ残しぬ






         雷鳴の残る御岳高原の夜風涼しく火祭りは賑はふ

         漆黒の空に篝火燃えさかり白樺林くれないに映ゆ

         他家継ぐこととなりたる末子と夫とわれ夏の御岳に登る











         幼くて死別の母にわが一世目守られ来たるを信じ生ききぬ

         納めの護摩の炎の奥にちちははを顕たしめ喜寿の息災を謝す

         まっしぐらの夫と躊躇する吾の大過もなくて金婚迎う

         脚病める雨の日なかを床に臥しうたたねの夢に種を蒔きをり

         機嫌良く酔うひて帰りてわが息子冷たき手もてわが頬挟む

         深海魚の眼とも見えたり豆電球雪夜の厨蒼く静もる


         癌病みて妹心を閉ざしゆく父母の墓前に泣きて帰りぬ

         初七日の夜明けに夢に妹は健やかな日の良き顔を見す

         満中陰の寺庭におもふ妹よ我が身をめぐり雪虫は舞ふ

         妹の忌明けのあしたひっそりと降る初雪はいづこより来ぬ




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