短歌友の会作品 | NHK短歌講座を受講、実作、平成9年より短歌友の会「彩歌」へ投稿してきた作品です。投稿時の思いも書きました。 |
平成17年
月の明るき我が庭にゆふべもけふも虫の音絶えぬ
合掌造りの葺き替え作業も重文ゆえに伝統の結い廃れゆく
新世紀の結いの形を育くみて父祖の遺産を譲り給えな
火山ガスも受容し帰る島人の明日の幸をひたに祈りぬ
孫と発つ飛騨路に残月白かりき今台北の没り陽見送る
飛騨育ちなぜか暖冬は落ち着かぬ雪が降るふる正月がくる
戻る | Topページへ |
平成16年
白壁を写すお堀の水冷えていつしか鯉の姿も見えず
城山のなだりに落ち行く冬の陽は土蔵に照りて陰る庭菊
百年の老舗閉ぢたるわが友は火伏せの土蔵をひとつ残しぬ
雷鳴の残る御岳高原の夜風涼しく火祭りは賑はふ
漆黒の空に篝火燃えさかり白樺林くれないに映ゆ
他家継ぐこととなりたる末子と夫とわれ夏の御岳に登る
幼くて死別の母にわが一世目守られ来たるを信じ生ききぬ
納めの護摩の炎の奥にちちははを顕たしめ喜寿の息災を謝す
まっしぐらの夫と躊躇する吾の大過もなくて金婚迎う
脚病める雨の日なかを床に臥しうたたねの夢に種を蒔きをり
機嫌良く酔うひて帰りてわが息子冷たき手もてわが頬挟む
深海魚の眼とも見えたり豆電球雪夜の厨蒼く静もる
癌病みて妹心を閉ざしゆく父母の墓前に泣きて帰りぬ
初七日の夜明けに夢に妹は健やかな日の良き顔を見す
満中陰の寺庭におもふ妹よ我が身をめぐり雪虫は舞ふ
妹の忌明けのあしたひっそりと降る初雪はいづこより来ぬ
戻る | Topページへ |